『ひかり ep』制作日記

クラシックギターと歌、2本のマイクを立てて、一発録音をした。ギターは御茶ノ水の楽器店で、思いがけない出会いをして即購入した西野春平さんの手工品。今回の録音には、クリックを一切使わなかった。(クリックとは、一定の間隔で音を刻み、録音する際などに、テンポを合わせるために使うガイド音のようなものです。)

いつもライブで演奏するときのように、自分の間合いで録音するには、ベストな方法だったと思う。クリックありで一度試してみたけど、曲のなかで間や拍が変わったりするから、”基準”の音があると、逆に演奏が難しかった。弾き語りならではの録音方法ではあるが、多重録音であってもクリック音は排除していったほうが、好きな感じになりそうな気もしている。

今まで経験してきたレコーディングで、演奏がズレたり、よれたりする部分に、しっくりきたり、ぐっとくることが多かったけれど、その部分も時に綺麗に均され、平坦になっていく場面が時々あって、どこか正解のない”正解”に全員で向かうような、違和感を感じるときもあった。なので、今回は”生身”の音やリズムを、うまく録音できればと考えた。自分がいま、好んで聴いている曲たちが、そういうものだと言うのもあるけれど。

『ひかりep』のレコーディングを経て、自分の音楽を、初めて自分以外の人に聴いてもらうときのような、ずっと前の初心の気持ちをもう一度、感じることができたのは、本当に幸せな出来事だった。例えると、今までのすべての経験を持ったまま、タイムマシンに乗って、中学生からもう一度やり直せるような、そんな感じに似ている。

(セルフライナーノーツは面白く書ける自信がないので、聴いてくれた皆さんに委ねたいと思います。未聴の人は、これを機に入手してみてください。)